『いずれ出発だ』──院内の絵に込めた想い
当院に来てくださる方から、「待合室や診療室の絵が素敵ですね」と声をかけていただくことがあります。
実は、この絵には私にとって特別な思い出があり、クリニックの大切な原点につながっているのです。
待合室の絵との出会い
開業準備中は、初めてのことばかりで不安が尽きませんでした。
一緒に働いてくれるスタッフは見つかるのだろうか、患者さんは来てくれるだろうか…。
そんな気持ちを抱えながら、開業の打ち合わせで訪れた赤羽のオフィスの帰りに立ち寄ったカフェで、運命の出会いがありました。
壁に飾られていたたくさんの絵。
「待合室にはクリニックの“顔”になるような絵を飾りたい」と思っていた私は、その絵を見た瞬間に「この絵の雰囲気とても良いな」と直感しました。思い切ってオーナーに声をかけたところ、なんとご本人の作品。快く「ぜひ」と言っていただき、当院のために一枚描いてくださったのです。豆電COFFEEのマスターの作品です。
タイトルは 『いずれ出発だ』。
まだ何も始まっていなかった私を勇気づけ、背中を押してくれる言葉でした。開業前の不安な気持ちを奮い立たせてくれる、まさに私に必要な一枚でした。
診療室の絵に込められた日々
診療室に飾っているのは、お友達の作家・コグレチエコさんの作品です。
東京医科歯科大学付属病院(現東京科学大)に勤務していた頃、近くのギャラリーで展示があると知り、足を運んで出会いました。
大学病院では根管治療を専門とする先生方に囲まれ、マイクロスコープを毎日のように使わせてもらえる環境でした。
今まで悩んでいたことが日々クリアになり、学びの多い、本当にありがたい時間でした。
一方で、その時期は第一子を出産した直後。
子育てと仕事を両立する初めての経験は想像以上に大変で、0歳の子どもを保育園に預けた初日、お迎えに遅刻してしまい先生の前で泣き崩れたこともありました。
それでも、多くの人に支えられながら「マイクロスコープを使った根管治療を専門的に学びたい」という思いを胸に過ごした日々。今振り返っても、新鮮で刺激的で、実りある時間でした。
その時に出会った作品は、開業したら必ず飾ろうと心に決めていた一枚。実際にクリニックに飾ったときには、さまざまな思いが込み上げて感無量でした。
おわりに
待合室や診療室に飾られた絵は、私にとって「初心を思い出させてくれる存在」です。
患者さまに安心して過ごしていただきたいという想いを込めて選んだ、クリニックの大切な仲間でもあります。
歯医者はどうしても「怖い」「行きたくない」と思われがちですが、院内の雰囲気やアートが少しでも患者さまの気持ちを和らげるきっかけになれば嬉しいです。
そして同じように日々頑張っているお母さん・お父さん方にとって、「あの先生もいろんなことを経験してここにいるんだ」と感じていただけたら、こんなに嬉しいことはありません
院長
